リソグラフの講習を受けに行った。猫の体調が落ち着かなかったらキャンセルするつもりだったが、母に任せても大丈夫そうだと判断した。猫が回復しつつあることも、私が講習に行けることもよかった。
私はリソグラフに関心はあるけど、ZINEつくるつもりだけど、そこに詰める中身は未定だ。その制作を100%「余暇で楽しむ趣味」として満喫することはたぶんできない。その印刷物を何にできるか、まったくのノープランだ。
でもとにかく、つくりたいからつくるという動機でもいいじゃないか、ということを、リソグラフの操作説明を通じて伝えてくださった講習だった。リソグラフの操作全般の講習であると同時に、ものづくりへの誘いだった。参加された方の熱気にもふれて、すごく元気の出る時間だった。
意外だったのは、リソグラフは安価な印刷手段だという話だった。A3裏表を16分割して折って切って綴じたものを200円、300円で売るというようなことが手軽にできる(人件費はとりあえずおいとくとして)というような話は、「興味ある」から「やってみようかな」に進ませるに十分な具体的イメージを喚起させてくれた。
もうちょっと早く着手できていたら、インボイス制度反対のチラシや統一地方選挙のチラシをつくったりできたかもな……と思うが、少なくとも統一地方選挙は4/23の選挙もまだある。
そういう用途でなくても、ただのフリーペーパーをつくったっていい。生産性から離れてもいいんだ。これは、私が久しぶりに摂取する水なのかもしれない。生きていくために必要だから飲む水じゃなくて、飲みたいから飲む水。体を洗うためのシャワーじゃなくて、浴びたいから浴びる水。そういうものにできるのかもしれない。
ひとまず、1カ月に1回以上、何かをつくることを目標にしてみようか。締め切りがないと月日の流れにまかせてしまうから。まず1回、練習してみたい。
そんなことを考えながら店を出て駅に向かったが、次の場所に行く前に少し休みたかったのと小腹を満たしたかったので、駅前のコーヒーショップに寄った。
渇いた脳に水をもらったような気分の余韻もあり、久しぶりにミルクレープを頼んだ。外でミルクレープを食べることなどいつぶりだろう。カラメルが利いたミルクレープはたいそうおいしかった。
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次に向かったのはめがね屋さんだった。懸案だった老眼鏡(リーディンググラス)の情報収集と、手頃なものがあれば購入するために。
最近、最近といってもちょっと前からだけど、校正のゲラを見たりエンピツを入れたりするのがしんどくなってきた。先日までつくっていたテディベアはもう糸の目が見えづらく、裸眼で縫っていた。そういう状況を老眼鏡で打開できるのではないかと、SNSで「リーディンググラスを買いました!」と記されたすてきなめがねの投稿を見て考えたのだった。
めがね屋さんに行く前にホームセンターの老眼鏡コーナーなども覗いてみたこともあったが、設置されていたお試し用老眼鏡をかけても全然ピンとこなかったのだ。どれをかけてもピントが合う感じがしなかった。だからまず、私は老眼鏡の選び方を知りたかった。
行ったのは、駅ビルに入っているチェーンのめがね屋さん。レンズが数タイプある既製品の老眼鏡をかけてみたが、やっぱりピンとこない。その辺りで店員さんが近づいてきたので選び方を尋ねたら、「お客様の場合は、既製品ではなく度に合わせてつくったほうがいいと思いますよ」と言われた。一からつくるほうがいいに決まっているのはわかるが、既製品では無理なのか、それともベターだから勧められているのか、既製品だったらどう選べばいいのか、それを知りたかった。でも知りたい回答は得られなかった。
気持ちがしおれたが、ここで諦めていいのか、別のめがね屋さんに行くか、決めかねた。店内をうろつき、老眼鏡に関するパンフレットを眺めていたら、別の店員さんが声をかけてきた。さっきと同様の質問を投げかける。かえってきた答えはさっきとは違った。
結局のところ、近眼の私の場合、既製品の老眼鏡では度が合わないだろうという話だった。もしかしたら、めがねを売るためのトークだったのかもしれない。でも、かけてみてピンとこなかったということは、度が合っていないのだろうとは思えた。そして度を測ってみることにした。
度を測るときに聞かれたのは、用途と、どのぐらいの距離で対象物を見たいか、だった。担当者曰く、「老眼鏡は見たいものを見たい距離で見えるようにするためのものなので、お客様が『この距離で見たい』という距離に合わせてつくります」ということだった。
用途は読書、書き物、手芸をするときに使いたいと答えた。問題は距離だった。本を読むとき、書類に書き込むとき、縫い物をするとき……そういうときに、どういう距離で見え方に支障が出て、どういう距離ではっきり見えるようにしたいか。その距離感が、まったくおぼろげだった。しかたがないので、本を読むような手の動きや縫い物をするときの手の動きを再現して、「だいたいこのぐらいかなあ」という距離を出した。
度を測定しレンズを調整して、最後に「このレンズでどうでしょうか?」と提示されたレンズをかけたときのくっきり見える感には感動してしまった。興奮して「めっちゃ見えますね」を連呼してしまった。担当者は「めっちゃ見えるでしょう」と言ってくださった。はい、めっちゃ見えます。
測定前は買うかどうか決めていなかったけど、これは買うしかないと思った。手元不如意ゆえ安めの、それでもいいなあと思える水色のフレームを選んで購入した。出費が重なるのはつらいけど、目は大事だからね。