言葉の使い道

朝、私がまだ寝ていた頃に、いつもより強めのJアラートが発されたらしい。このアラートなるものを、市民の命や暮らしを守るためでなく政府の脅しとしてしか機能させていないことに腹が立つし、この体たらくで反撃能力とかほざくことにも腹が立つ。黒岩の「がまんのウイーク」を思い出してまた腹が立つ。

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先週の今頃、「こういう状況になっても、(神奈川知事選で)どうせ黒岩が当選するんだろうな」みたいな投稿をあちこちで目にしたが、私は少なくとも投票が締め切られるまではそれは言いたくないなと思った。
その「どうせ……」は実現可能性の高い予測だったのかもしれないし、神奈川県の有権者のあり方の問題を一方向から表したものかもしれないし、怒りや愚痴の表現だったのかもしれない。
でも、投票締め切り前に見る「どうせ……」は、現実社会に空から落とされた墨みたいに見えたし、現実として黒岩を利する方向にしか働き得ないと思った。その言葉が他人や自分に及ぼす影響を考えたら、私は言いたくないと思った。

その「どうせ……」を書いた人が「愚痴だから、その言葉がどういう影響をもとうが知ったこっちゃねえ、自分は社会に有益なことだけを言うコンテンツメーカーじゃねえ」と思っていたとしたら、「それはそうだね」と思う。「SNSは単なるチラシの裏」と扱っている人もいるかもしれない。SNSの使い方は人それぞれだ。それでも私は、それは言いたくないなと思った。人にも自分にも。日曜の20時までは。そして20時を過ぎてからは、テキストエディタで呪詛を書き連ねた。

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国会で審議入りしてしまった(内容はとても改「正」とは言いがたい)入管法改正案について、立憲民主党は〈修正を求めていく考えを示し〉たという報道が流れていた。成立を止めることができた2021年とは野党が置かれている状況が違うということはわかる。それでもこの、人の命に直接的に関わる局面で、はなから修正を求める構えでいくという野党第一党に「じゃ、しょうがないね」と言えるか。言えないだろう。ということで、「修正ではなく廃案を求めるべきだ」という意見をFAXする動きが続いていた。

それを見て、「野党がいくら反対したところでもはや数で勝てないから、廃案は無理。せめて修正を勝ち取るしかないのだ。その数の論理、国会の仕組みを知らず、立憲にFAXしてもしょうがない。FAXなら与党にしたらどうか」というような内容の投稿をする立憲民主党支持者や、いわゆる国会クラスタがみられた。

ふだんから国会を見ている人だからこそ、あるいは立憲民主党の支持者だからこそ、そういう方針でいくことの背景事情を「わかる」のかもしれない。現実がそうなのだ、という話をしているにすぎないという感覚なのかもしれない。でも、今SNSにのせる言葉がそれなんだ……というのはけっこう落ちこむ。今まさに反対の声を上げている人がいるのに、汚れない場所から冷や水をぶっかけることしかできないのだろうか、と思う。

内容としては、「知っている」人による現実的な解説かもしれない。でも、その言葉が人に及ぼす影響は、先週の「どうせ……」と同じなんじゃないかと私は思った。解説したいだけの人を止める権利はないが、ソーシャルな場に流す言葉がどういう力を持ち得るか、もう少し自覚的になってもいいのではないか。現実を知ることと、それにどう抵抗するかを論じることは両立する。

あと、昨日今日で立憲民主党に「入管法改正案の廃案を求めます」のFAXを送っている人の多くは、言われなくても与党にもFAXを送っている。もう何度も何度も。そのうえで、野党第一党に「今」求めるものがあるから伝えているわけで。想像も配慮ももう少しできてもいいだろう。入管法改正案に賛成しているのでなければ。立憲へのFAXを「やつあたり」かのように表するなど論外だろう。

穿った見方をすれば、「おまえらが投票しなかったから、立憲民主党の議席を伸ばそうとしなかったから、今こういう状況になっているんだぞ」という感情がにじんでいる人もいるように思える。確かに立憲民主党を今の「数」にしたのは有権者だけど、「弱い」党にしたのはほかならぬ立憲民主党自身でもある。

SNSが人をエンパワーメントするものでなければならない、とは言わないし思わないが、せっかく国会をよく見ている人からは、今日このときには違う言葉を聞けたらいいのに。高望みだろうか。

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今の仕事、今週いっぱいかかるかなと思っていたけど、けっこう順調に進んでいる。索引作成の仕事、楽しい。しかし今はPDF検索が使えるけど、アナログ原稿だった頃の索引作成は大変だっただろうな……。

ジャニー喜多川の件についてようやくNHKがネット地上波で報じたが、アリバイづくり以上の中身がない、薄いものだった。他のメディアでは報じられていた、NHKのディレクターが問うたという質疑応答の内容も記述なし。

これも真偽不明だが、NHKディレクターの質問はNHK上層部が激怒したという話もみかけた。どこをむいてもつらい。

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